勉強の仕方アドバイス
「最近よくきく“国語力”とは?」「勉強の基礎になるって本当?」
など、最近よく見聞きするようになった『国語力』という言葉に戸惑っている人は少なくないでしょう。現在は国語力を養うための講座を開講している塾なども少なくはなく、注目度はますます高まってきています。国語力に関しては「幼い頃から国語力は身に付けるべき」「国語力が全ての勉強の基礎になっている」などという言葉はよく見聞きします。とはいえ実際に「国語力」について正しい説明をするのは難しいもの。そこで今回は、「国語力」に焦点を当て、国語力とは何か、国語力が問われるのはどんな時か、国語力を高めるにはどうしたら良いのかなどについて紹介します。
目次
■国語力ってよく聞きますが、どういうことですか?
まずそもそも『国語』とは何なのでしょうか。
辞書では、以下のように定義しています。
1 | 国の主体をなす民族が共有し、広く使用している言語 |
---|---|
2 | 日本の言語、日本語 |
3 | 「国語科」の略 ※国語科とは、国語としての日本語の表現や理解などの能力を伸ばし、言語文化の知識を豊かにすることを目的とする教科のことである |
4 | 外来語・漢語に対して、日本固有の言葉 |
これらの国語の意味を踏まえたうえで国語力とは何なのかを紹介していきます。
「これからの時代に求められる国語力」として文部科学省は以下の4つの能力を挙げています。
①考える力 | 理解する力 |
②感じる力 | |
③想像する力 | |
④表す力 |
●考える力
論理構築力、分析力などを含む論理的な思考力
論理構築力 | 会話の相手や様々な場面において、分かりやすく筋道のある発言をしたり、一貫性のあるまとまった文章を組み立てることができる能力 |
---|---|
分析力 |
|
●感じる力
相手の気持ちを読み取ったり、自然の美しさや雄大さに感動したり、文学作品の内容や表現を芸術として感じ取ったりすることができる情緒力
※言葉遣いに対して、意味の違いや美醜などを感じ取る「言語感覚」もここに含まれる
●想像する力
- 経験したことがない事柄や現実には存在していない事象に対して、こうではないかと頭の中で様々なイメージを思い描くことができる能力
- 相手の表情や態度、些細な変化などから言葉には出していない思いを察する能力
●表す力
上述した3つの能力を表現するための能力。
論理構築力や分析力によって組み立てられた考えや思いなどを文章や発言などで展開していける能力
以上の4つの能力が主に国語力とされるものです。
しかし、これらが効果的に働くためには必要不可欠な要素が2つあります。
①『国語の知識』(漢字や仮名遣い、文法など)
②読書などの方法で培われる『教養・価値観・感性』
です。
特に後者の『教養・価値観・感性』は、国語力の基盤の役割を果たすだけではなく、全ての活動の基盤となるものです。
人間として、あるいは日本人としての根幹に関わる重要なものであります。
国語力だけに目を向けるのではなく、国語力を構成する要素としてこれらが存在することもおさえておく必要があるでしょう。
ここまでは、国語力とは何かについて紹介してきました。
では、実際にその国語力が問われるのは勉強面においてどのような時なのでしょうか?
■数学や理科の問題で国語力が問われるのはどんな時ですか?
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一般的に数学や理科の問題において、国語力が問われるのは『文章問題』とされています。
計算式の問題は、数字が主となっており、文字が主の国語とは関係がないと思われがちだからです。
しかし、2008年にノーベル物理学賞を受賞した素粒子物理学者の益川敏英先生は数学と理科に関してこう発言しています。
「科学の基本は国語ですよ。(中略)数学は計算するもの、というイメージがあるかもしれないけど、数式は基本的に言葉なんです。数式とは「かくかくしかじかの関係がある」とか「○○という事実を表している」ということを語っていて、そういうことを組み合わせて発展させていけば、答えになる。だから、言葉が大事なんです。」
引用元:「大発見」の思考法(文春新書、山中伸弥 益川敏英著、P59~60)
益川敏英先生のいうように、数式や化学反応式などが事実を記号で表したものに過ぎないのなら、
国語というのは全ての問題の根底に存在するということになります。
そういった意味からは、国語力が問われるのは文章問題のみならず全ての問題だといえます。
中学生において国語力が問われやすい科目として特に挙げられがちなのが、数学や理科の文章問題です。
全ての問題の根底にあるものが国語であるということは前提としつつも、
今回は文章問題において実際にどのように国語力が用いられるのかについて紹介していきます。
こちらの数学の例題を見てください。
この例題を解くには、前提条件として、原価と定価の定義をそれぞれ知っておく必要があります。
- 原価:商品やサービスを生産するためにかかった元々の金額(仕入れ値)
- 定価:商品について前もって決定している売り値
つまり、原価が商品を生産する上でかかった元々の金額のことで、原価を踏まえた上で利益を見込んで決定する売り値が定価となります。
この原価と定価の違いが分かっていないと、「原価と定価って何が違うの? そもそも原価って何? 損するってどういうこと?」
というような疑問が頭を占め、問題を解こうとせずに断念するという最悪の事態に陥ってしまいます。
また、原価と定価の違いが分かっていたとしても、問題文の意図を正しく把握しないとこの例題は解けません。
例題を解く順序としては、まず定価を求めるところから始まります。
今回の例題においては、原価の2割の利益があるように定価をつけるとあります。
原価である2500円に12/10、または、1.2を掛けて定価を求める必要があります。
なぜ12/10を原価に掛けるのかというと、10割で2500円の商品に2割の利益があるように定価をつけるためです。
10割から2割分を足した12/10を、原価である2500円に掛けることになるからです。 式は以下の通りです。
2500×12/10=3000(円)
よって、定価は3000円となります。 しかし、ここで終わりではありません。
問題文には更にそこから定価の3割引で売るとあるので、先ほど求めた定価である3000円に7/10、または、0.7を掛ける必要があります。
なぜ7/10を定価に掛けるのかというと、10割で3000円の商品から3割の金額を引いて売るからです。
10割から3割分を引いた7/10を、定価である3000円に掛けることになるからです。
式は以下の通りです。
3000×7/10=2100(円)
よって、値引き後の金額は2100円となります。 ただ、ここまで解けたからといって、まだゴールではありません。
例題の最後に『いくらの損になりますか?』という文章があります。
先ほど求めた3割引の金額である2100円を原価である2500円から引いて損益を計算する必要があるのです。
式は以下の通りです。
2500-2100=400(円)
原価が2500円の商品を2100円の定価で売ることになるので、差し引けば400円の損になります。 よって、例題の答えは『400円』です。
例題自体は数行で簡潔なものですが、ここまでの長い過程を経て初めて答えを出すことができます。
逆に、あの問題文からここまでの過程を頭の中で論理的に組み立てることができなければ、問題を解くことはできないということです。
このように国語と関係のない数学の例題でも、問題を解いていく上では論理的に考える力、つまり、国語力が必要とされるのです。
理科の文章問題も同様で、問題文の意図を正しく読み取らないと、決してその問題を解くことはできません。
益川敏英先生のいうように文章問題であろうが計算問題であろうが、国語力というのは常に問われるものなのです。
思考過程が複雑になる問題、つまり、文章問題を解く時というのは国語力がより問われるといえるでしょう。
国語力を構成する4つの能力とそれを支える2つの要素。
これらを問題ごとに上手く活用し、正確な思考過程で答えを導き出していくことが重要となってきます。
国語力の重要性は上述した通りなのですが、ここまで読んだ方はこう思われるかもしれません。
では、その国語力を高める方法はないのか。
当然の疑問なので、次はその点について紹介していきたいと思います。
■国語力を高めるにはどうしたら良いですか?
国語力を高める方法ですが、最初の項において少し触れていたように最も重要となってくるのは何といっても『読書』です。
小説や参考書、漫画など様々なジャンルの書籍が書店には並んでいます。
国語力をつけたいと言ってもいきなり難解な書籍を読むとなるとさすがにハードルが高いと思います。
よって、まずは空き時間などを見つけ、興味のある書籍を毎日読んでいくことからおすすめします。
今までに気付くことができなかった考え方や知識、教養を取り込むことができるので、人としての成長のきっかけとなったりもします。
例えば、文学作品などであれば、偉人が行間に込めた想いに触れることになります。
知識や教養を取り込むことができるだけではなく、豊かな感性を育てることにも繋がります。
国語力を高める方法の根底となる部分が、このインプットの作業です。
しかし、インプットといっても、ただ単に文章を読むだけでは向上する国語力には限度があります。
さらにそこから国語力を向上させたい場合には、文章を読んで理解した上で、自身でも文章に起こすこと、
つまりアウトプットの作業が必要不可欠です。
読書によって得られる知識や教養を自身の中でまとめ、文章として書き起こす。
このインプットとアウトプットの作業を繰り返すことで、自ずと国語力は向上していきます。
読書感想文などはその最たる例で、読書によって得ることができた知識や教養を頭の中でまとめ、あらすじや自身の考えを交えつつ他者に紹介していく。
上述したインプットとアウトプットの流れが読書感想文を書くという1つの作業に完全に含まれているのです。
国語力を高める方法は、このインプットとアウトプットの作業を様々な場面で行うことである、といった方が分かりやすいかもしれないです。
最後に日々の生活の中で簡単に行うことができる国語力を高める具体的な方法を紹介します。
■書籍を読む
どんなジャンルの書籍でも構わないので、毎日読むようにすることがポイントです。
書籍を読み終えたらしばらく読まず数ヶ月後に新たな書籍を読む、といった流れよりは、
毎日少しずつでも良いので、なるべく間を空けないようにして読んでいく方がより有効です。
文字に触れることが習慣化されるといった効果があるからです。
また、小説やエッセイなどを公募している企業や団体は調べればいくらでも出てきます。
そういったものに挑戦してみるのも立派なアウトプットの作業の1つです。
■新聞を読む
新聞は毎日発行されており、文字の量も豊富です。
社会の流れを知るという意味でも、これ以上のツールは他にはないといっても過言ではありません。
しかし、紙面をぎっしりと埋める活字を見ると、読む気が失せてしまう気持ちはよく分かります。
よって、読む箇所をあらかじめ決めておく、というのが新聞を読むうえではポイントとなります。
例えば、コラムや社説、スポーツ欄だけを読むというようにあらかじめ限定しておくのです。
そうす ることで、文字の量が減り、無理なく毎日読むことができます。
また、新聞の記事をノートなどに書き写すことも効果的です。
書き写す記事を吟味する作業を通じて知識や教養をインプットすることができ、ノートに書き写すことでアウトプットすることができます。
毎日これを行うことができれば、国語力は飛躍的に向上するでしょう。
そうとは言っても中学生で新聞を読むのはなかなか抵抗があるかと思います。
まずは読売新聞 から発行されている中高生新聞など、読みやすい媒体から始めることをおすすめします。
■人の話をしっかりと聞く
「え、本は読まなくても良いの?」と思われるかもしれませんが、人の話をしっかりと聞くことだけでも、実は国語力は高まるのです。
しかし、しっかりと聞くということなので、何かをしながら話を聞いていたり、自分が一方的に話をするなどといった場合には効果はありません。
よって、相手の目を見て、話していることを聞き漏らすことなく、何を伝えたいのかという意図をきちんと読み取り、それを受けたうえで、自身が考えることを伝えていくことが重要です。
そして、上の行程がまさにインプットとアウトプットの作業になっているのです。
日頃の自身のコミュニケーションを振り返ることが国語力を高める近道だったりもします。
■まとめ
国語力についてここまで紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
一概に国語力を高めるといっても、そこには様々な要素が絡み合っています。
仮に同じ方法を行ったとしても、各々で得ることができる効果というのは異なってくるでしょう。
また、効果が目に見える形で現れるとも限りません。
しかし益川敏英先生がいうように、国語力が全ての勉強の基礎であることに疑いはない事です。
まずは文字の量が少ない小説を読むなど、無理のない範囲から始めていくことが国語力を高める第一歩といえるでしょう。
※国語力の高め方には以下のコラムもご参考下さい!