勉強の仕方アドバイス
「うちの子、家で全然勉強しないんです」
など、塾の面談でこのようなご相談をよくいただきます。また、保護者の方だけでなく生徒からも「ふだんの勉強時間ってどのくらい必要なの?」といった質問を受けます。 勉強時間についてはだれもが漠然とした不安を感じているのかもしれません。そこで今回は、中学生の平均的な勉強時間と、勉強時間を長くするコツについて紹介していきます。平均を知ることで、自分の勉強スタイルの参考にしてみてくださいね。
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目次
中学生の平均勉強時間は?
2015年に行われた「第5回学習基本調査」によれば、家庭での中学生の平均勉強時間は90分とされています。
この調査は中学2年生を対象とされていますが、家庭での学習時間が平均90分であるのはかなり意外な数字でした。現場に身をおく者の感覚ではもう少し短いという印象を受けます。このデータでは、家庭での学習時間には塾での学習時間や学校の宿題をする時間も含まれるということなので、少し多めに出ているのかもしれません。
2001年の調査が最も学習時間が短く、平均で80.3分とされていることを思えば、ここ15年で家庭での勉強時間は約10分も増えていることになります。こうした勉強時間の増加の背景には、勉強に対する意識の変化があるのかもしれません。2001年頃から「勉強することは大切だ」と考えるが中学生が多くなっており、2015年には過去最高の約40%となっています。2001年の調査では24.5%でしたので、大幅に伸びました。
学年ごとに勉強時間の差はある?
学年ごとに勉強時間の差はあります。ベネッセ総合教育研究所 の調査結果によると、以下のようになります。
[参考伊サイト]
⇒ベネッセ総合教育研究所:「子どもの生活と学びに関する親子調査2017」
中1の勉強時間の平均は?
中学1年生の勉強時間の平均は1時間45分です。内訳は、宿題が57.3分、家庭学習が31.2分、学習塾が16.2分です。特徴としては、中学生の全学年で宿題での学習時間が一番多くなっています。一概には言えませんが、一つの要因として、中学1年生は中学校の学習への適応期間であるということが考えられます。中学校の宿題の出され方や、取り組む内容など、小学校までと大きく変わります。それに対してまだ不慣れな時期なので、自ずと宿題にかかる時間比率も大きくなることが考えられます。言い換えれば、宿題にじっくり取り組むことができている期間と言えるでしょう。
中2の勉強時間の平均は?
中学2年生の勉強時間の平均は1時間42分です。内訳は、宿題が51.3分、家庭学習が30分、学習塾が21分です。特徴としては、中学生の中で一番、学習時間が少ないということです。中学1年生と比較すると、学習塾での勉強時間は増加していますが、宿題の勉強時間は減少しています。中学2年生になると、宿題の量が減少する、ということは考えられません。つまり考えられる要因としては、中学校の学習への慣れが考えられます。どのように宿題に取り組めばよいか要領を得られたため、効率よく宿題をこなせるようになったことが、中学1年生のころよりも、勉強時間短縮に繋がったと考えることができます。また、家庭学習の時間はほぼ変わりませんので、その分、学習塾での勉強に時間を費やすことができるようになったとも言えます。
ただ、総勉強時間が減少していることから、別の要因も考えなければいけません。要領がよくなったということは、言い換えれば、うまく手を抜けるようになった、とも考えられますので、注意が必要な時期です。
中3の勉強時間の平均は?
中学3年生の勉強時間の平均は2時間14分です。内訳は、宿題が51.3分、家庭学習が43.9分、学習塾が38.5分です。特徴としては、中学生の中で一番、学習時間が長いことです。受験生であることから、学習時間の増加は必然的と言えます。特に顕著なのは、学習塾での勉強時間です。中学1年生と比較すると、約2.4倍。中学2年生と比較すると、約1.8倍です。次に多いのが家庭学習の時間です。中学1・2年生と比較すると、約1.4倍です。宿題の時間は、中学2年生とほぼ変わりません。
毎日勉強している中学生はどのくらいいるの?
2015年に行われた「第5回学習基本調査」によれば、家庭において毎日勉強している中学生は約40%です。週に半分以上(4〜5日)と答えた中学生を含めると、約3人に2人は週の半分以上、家庭において勉強をしていることになります。反対に、週1日以下しか勉強しない中学生は約5人に1人です。
こちらのデータを見ても、週に半分以上勉強する中学生の割合は2015年が過去最高となっており、週1以下しか勉強しない中学生の割合は2015年が過去最低となっています。
「最近の子どもは勉強しなくなった」と言われて久しいですが、こうしたデータを見ると実は最近の子どもはよく勉強しているのです。
休日と平日の勉強時間に差はある?
休日と平日の勉強時間は以下のようになります。
[参考サイト]
⇒ベネッセ総合教育研究所:「第2回子ども生活実態基本調査報告書」
中学生に焦点を当てると、平日は1時間未満が50.6%、1時間以上~2時間未満が33.3%、2時間以上~3時間未満が11.3%、3時間以上が3.3%となっています。これが休日になると、1時間未満が47%、1時間以上~2時間未満が27%、2時間以上~3時間未満が14.6%、3時間以上が9.9%となっています。
注目点としては、2時間以上の割合が、平日14.6%から休日24.5%に増加しているのに対し、ほとんどしない割合が、20.5%から22.2%に増加していることです。これから推測されることは、個人ごとの勉強時間に差が生まれ、学力格差が拡大することです。
勉強時間が長ければ成績は上がりますか?
上のような調査結果を見ると、「みんな勉強しているからウチの子にも勉強させなきゃ!」「ぼくも負けてられない!毎日1日2時間は勉強しよう!」といったように、勉強時間を伸ばすことに目がいきがちです。もちろん勉強時間は長いに越したことはありませんが、ただ長く勉強すれば成績が上がるというわけではありません。
「勉強時間=効果」ではないということです。成績がなかなか上がらないと、その原因を勉強時間に求めてしまいがちです。しかし、むやみに勉強時間を伸ばそうとするのは、長い目で見たときに逆効果になる場合もあります。
そもそもなぜ勉強時間が短いのか?
そもそもなぜ勉強時間が短くなるのか。まずはその原因をしっかりと掴んでおく必要があります。多くの生徒と接してきた経験上、以下のどちらか、あるいはその両方に原因があります。
- やる気が出ないから勉強する気にならない
- 忙しくて勉強する時間がとれない
つまり、「心理的な要因」と「物理的な要因」です。勉強が好きだという人は大人になっても少ないわけですが、中学生はなおさらです。彼らにとっては、ゲームをしたり、マンガを読んだり、友だちとSNSをしている方がよっぽど楽しいのです。その上、放課後は部活動や習いごともあり、体力的にもいっぱいいっぱいです。そんな状態の中学生ですから、彼らにとっては勉強をすること自体すでにがんばっているのです。その上で、勉強時間を伸ばすというのはなかなかできることではありません。
こうした実情を踏まえて、勉強時間が短くなってしまう「心理的な要因」と「物理的な要因」を取り除き、勉強時間を長くするコツをお伝えします。
勉強時間を長く確保するためのコツは?
まずは「やる気がでない」という心理的な要因を取り除いてあげることが最優先です。
やる気がでないのは、
- 勉強が楽しくない
- 勉強がわからない
- 勉強しても結果につながらない
など色々な要因が考えられますが、これらの根本的な原因は「できない」ことにあります。「できた!」と感じているとき、人間の脳内ではドーパミンという物質が分泌されています。実はこのドーパミンが分泌されることで人間は喜びを感じ、やる気の原動力になることが脳科学によって証明されています。
つまり、やる気を出すためにはまず「できた!」という実感が必要なのです。よく子供に勉強をさせるために、「こんな点数じゃ通知表に2がついちゃうよ!」「勉強しなくちゃだめでしょ、このままじゃ行きたい高校にいけないよ!」といったように声をかけてしまいがちです。しかし、こうした危機感をあおるような声かけではなかなか中学生は勉強しません。彼らからすれば、「そんなこと言われても、がんばってるし!!」「そんな先のこと言われても、その時になったらがんばるし!!」 といった具合に彼らの中では単なる不満として消化されてしまうのがオチです。
やる気を引き出すためには、まずは「できた!」という実感を持たせてあげることが大切です。
[関連記事]ちょっと紹介!「できた!」を引き出す
⇒メビウスのやる気サイクルとは?
できた!と感じてもらうためには?
具体的な方法として一例をあげると、問題集を一緒に解き、途中の過程で分からないところをサポートしながら「できた!」まで導いてあげてください。この時に「こんなことも分からないの!?」は厳禁です。分からないものは分からないので仕方がないと割り切って、どんな簡単なことでもヒントを出し続けてあげてください。ゴールまで導いてあげることで、ご本人は「できた!」と感じることできます。
成功体験を積みかさねていくことがやる気を引き出す一番の近道です。
やる気を引き出したら次にやることは?
勉強に対してやる気が出てきたら、次は物理的な要因を解消していきましょう。「やるぞ!」という気持ちになれば、次はその環境をつくることが大切です。オススメなのは次の2点を決めることです。
- 勉強する場所を決める
- 勉強時間の最低ラインを決める
この2点をはじめに決めてしまう理由は習慣づけにつながるからです。いくらやる気が出たからといって、1日だけ勉強して、次の日からはまったく勉強しないのでは意味がありません。長い目で見たときに、勉強時間を伸ばそうと思えば、勉強を習慣づけてあげることがもっとも大切です。
勉強する場所を決める
勉強する場所を決める理由は、脳は無意識のうちに場所と行動をセットで記憶するからです。何かの行動を継続しようと思えば、一つの行動は一つの場所で行うことでその行動を続けられる確率が高くなります。ですから、まずは勉強する場所を決めてみてください。「この机に座ったら勉強するんだ」という記憶を脳に定着させてあげれば、その机に座るだけで自然と勉強モードに入っていけるようになります。
勉強時間の最低ラインを決める
よく耳にするのが「毎日1時間勉強する」といった毎日の勉強時間ですが、この毎日1時間を1年間続けられた生徒を見たことがありません。1ヶ月もなかなか続かないのが実際のところではないでしょうか。こうした目標は、普通の中学生にとってはハードルが高すぎるのです。とはいえ、毎日勉強することは勉強時間をトータルで伸ばしていく上では非常に大切ですし、学習効果としても高くなります。
そこでオススメなのは勉強時間の最低ラインを決めるということです。ここでのポイントは、この最低ラインを思いっきり低くする設定することです。例えば「1日5分勉強する」とか「1日3問、問題集を解く」とか「まずは机に座る」などといったレベルです。
「そんなに低くて大丈夫なの!?」と思われるかもしれませんが、むしろそのくらい低い方がいいのです。最低ラインを低く設定することで、毎日継続することができるようになります。そのかわりに、風邪をひいて少し体調が悪くても、部活の大会で疲れて帰ってきたとしても、このルールだけは必ず守るようにしてください。そしてこれはあくまでも「最低ライン」ですから、これ以上勉強してもOKです。人間は5分程度同じことをすれば、気分が乗ってくるものです。その気分にまかせて続けていたときに、気づけば30分、1時間と勉強できていたりするわけです。
勉強時間に関する生徒さんからのよくある質問
朝と夜、どっちで勉強するのが良いですか?
勉強時間を確保するために、朝派と夜派で意見が分かれると思います。結論から言うと、どちらが正解という答えはありません。どちらも一長一短がありますので、自分にとって効果的な方を選択すると良いでしょう。
朝に勉強するメリット
⇒起床直後なので、脳が一番冴えており、情報の暗記と理解がスムーズ
朝に勉強するデメリット
⇒起床できないと、勉強計画がすぐに崩れる
夜に勉強するメリット
⇒寝る前の勉強は、記憶が定着しやすい
夜に勉強するデメリット
⇒睡眠時間が削られると、翌日の勉強の集中力が低下する
個人的な意見を述べておくと、どっちで勉強するのが良いかと聞かれたら、私は「朝」と答えます。理由としては、学校のテストも、高校入試も、午前から実施されるからです。脳科学的に、人間の脳は朝起きて3時間後が最も効率よく働くと言われています。つまり朝勉強することを習慣化していれば、実際のテスト時間に合わせて、脳が最大限働くように準備することができます。逆に夜型の場合、テスト当日だけ、いつもと違う時間に早起きしなければならない可能性があります。いつもの習慣と異なってしまうと、自分の体調やリズムが崩れる可能性があるのです。
私立と公立では勉強時間に違いはある?
私立中学校と公立中学校では、授業の勉強時間に違いがあります。まず、文部科学省が定めている中学校の年間の総授業時間数は1015時間です。これが標準となります。公立中学校は、基本的にはこの基準に沿って授業を実施していきます。
私立中学校については、中学校ごとに異なります。例えば、常翔学園中学校はおよそ1,332時間、四條畷学園中学校はおよそ1,356時間程度になります。高槻中学校など、およそ1,500時間程度ある中学校もあることから、私立と公立の比較に加え、私立の中でも授業時間に違いがあると言えます。
[参考サイト]
⇒【総合的な学習の時間編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説
⇒全国私立中学校の総授業時間数
受験前になると平均睡眠時間はどれくらい?
平均して、約8時間は睡眠時間を取りましょう。まず、自分が万全の体調を維持できる睡眠時間を取ることが大切です。つまり、受験前の睡眠時間をどれくらい取ればよいかを、万人に当てはめることはできません。
「受験前は、追いこみだから寝る時間があったら、その分勉強しなきゃ!」
受験前になると、そんな声が受験生からよく聞こえてきます。実際、深夜遅くまで受験勉強に取り組んで、睡眠時間を削っている受験生も少なくはありません。受験に向けて気合十分なことは素晴らしいのですが、睡眠時間を削ることが必ずしも良いとは言えません。
睡眠専門医の坪田聡さんによると、例えば、いつも8時間の睡眠を取っている人が、2時間の睡眠を削るだけで、ほろ酔い程度のアルコールを飲んだ状態と同じになるそうです。十分な睡眠を取って、万全の状態で勉強に取り組みましょう。
[参考サイト]
⇒【受験生応援2019】睡眠専門医・坪田聡さん 入試直前の「睡眠」のアドバイス
夏休みはどれくらい勉強したら良い?
これは学年や個人の目標によって異なってきます。なので、これくらい勉強すれば良いという一般的な指標はありません。ただし、夏休みは中学校から宿題が多く出ます。そういう意味では最低限、宿題を全て済ませるだけの時間確保は必要になります。学校ごとで出される宿題の量は異なります。また、どれくらいの時間で終わらせることができるかも、個人によって違います。
その時間の見込みが立てられない場合は、まずプリント1枚にかかる時間や、問題集1ページにかかる時間を計ってみましょう。もしプリントが10枚あって、1枚に30分かかったとしたら、10枚終わらせるのに300分(=5時間)かかります。それが、英語、数学、理科、社会、国語の5科目分あるとしたら、5時間×5科目=25時間必要になります。もちろん、1枚あたりの問題量や、自分の得意・不得意によって、かかる時間は変わってきますが、およその必要勉強時間は目安が立てられるのでおススメです。
一般的な指標はないと最初に言いましたが、質問に対してひとつの指標を示しておくと、一日平均5時間です。理由としては、学校がある時は、毎日約5時間は授業で勉強しているからです。受験生の場合は、8時間以上を目安にしてください。
まとめ
2015年の中学生の平均勉強時間は90分と、15年前と比べると10分も増加しています。こうした背景には中学生の勉強に対する意識の向上があります。だからといって、ただやみくもに勉強時間を伸ばそうとするのは得策ではありません。
中学生の実情をふまえて、無理なく勉強時間を伸ばしていくためには、上に書いたような方法から始めてみてください。長い目で見たときに、きっとうまくいくと思います。