勉強の仕方アドバイス
目次
中2の数学でつまずくと、取り返しが難しい!
「数学は、どの教科の中でも大切な科目だ。」そう考えている中学生は多いです。実際、塾に通っている中学生で、数学を習っている生徒は多いと思います。
中学生に、「テスト勉強で、何の科目に、一番時間を使ったか?」の質問をすると、「数学」と答えるケースが多いです。例えば、「国語」と答える中学生より、「数学」と答える中学生の方が多いのが事実です。また、高校入試においても、数学は必須科目のひとつです。
それなのに、多くの中学生が、そうして数学に注力していながらも、つまずいてしまうのはなぜなのでしょうか?
特に、中学2年生の時期に、数学でつまずく生徒は激増します。
今回は、中2数学の単元ごとに学習のポイントを説明しながら、つまずいてしまう要因や、注意すべきポイントについて解説していきます。
中2数学の学習単元一覧
式の計算
式の計算、文字式の利用
連立方程式
連立方程式、連立方程式の利用
一次関数
一次関数とグラフ、一次関数と方程式、一次関数の利用
図形の調べ方
平行と合同、証明
図形の性質と証明
三角形 、四角形
場合の数と確率
箱ひげ図とデータの活用
式の計算の学習のポイント
当然のことですが、中学1年生で習った内容を土台として、計算がより複雑化してきます。中1ではまず、正の数・負の数の計算をしました。加法(足し算)、減法(引き算)、乗法(かけ算)、除法(わり算)が基本となります。中2数学では、その基本の解き方をもとに、より複雑な計算が求められます。まず、違いを見ていきましょう。
実際の問題の例
中1の計算例
-3x+2x
中2の計算例
(7x+3y)-(2x-5y)
中1数学と中2数学の違い
- 文字(xやy)が1つの式に1種類だったのが、複数出てくるようになる
- 項(数字の数)が増加するため、1問の中でより多くの計算を求められる
- かっこのある式が増加するため、符号が頻繁に変わることで、計算ミスをしやすくなる
文字式の利用について
ここまでの内容で、「なんだ、数字が増えて複雑にはなるけど、それさえ気をつければ大丈夫」と、もし感じたなら要注意です。重要なポイントはここからです。
この『式の計算』の単元には、「文字式の利用」という学習項目があります。端的に説明すると、「なぜそうなるのか?の説明を、答えとして求められる単元」になります。
まず、中2の1学期のここでつまずいてしまう中学生が続出します。
「説明しなさい」のと問われる時点で、「えっ?説明?意味が分からない」になってしまうのです。
分かりにくいと思いますので、実際の問題を見てみましょう。
[問題例]
連続する3つの整数の和は、3の倍数になる。その理由を、文字式を使って説明しなさい。
このように、「説明しなさい」が問われだします。そもそも、問題で問われている内容の意味が分からない、言葉の意味が分からない。そうなってしまう中学生が実際に多いです。この例題の模範解答を以下に示しましょう。
[答え]
連続する3つの整数のうち、いちばん小さい数をnと表すと、連続する3つの整数は、n、n+1、n+2と表される。
これらの和は、
n+( n+1) +( n+2)
=3n+3
=3(n+1)n+1は整数だから、3(n+1)は3の倍数である。
よって、連続する3つの整数の和は、3の倍数になる。
上記の説明すべてが答えとなります。このように言葉を用いながら、論理的な説明が求められます。
数学=計算、と考えている中学生は多いので、こうして言葉を使って説明しなければならない問題に戸惑う中学生が多いのが事実です。数学は、単なる計算を解く問題だけだと思っていたら大間違いなのです。
実はこのことは、中2の2学期以降に習う別の単元で、より深く求められるととになります。それが、「図形の性質と証明」の単元です。それについては後に説明していきます。
連立方程式の学習のポイント
さて、ここまでの時点で、中3数学はなんだか大変そう…という予感はしていただけたのではないでしょうか?
しかし、それに追い打ちをかけるかのように、次の計算単元がやってきます。それが、連立方程式です。方程式というと、中1数学で学習済で、以下のような問題です。
実際の問題の例
(例題)次の方程式を解きなさい
23x+1=3
この問題で、「あれ?どうするんだっけ?」となったら、既に赤信号です。確実に、中2数学でつまずきますので、しっかり復習しましょう。
連立方程式とは、端的に言えば、2つの方程式を組みにしたものです。また、ひとつの方程式の中に、2つの文字を含むようになります。
(例題)次の連立方程式を解きなさい
23x+y=3…①
2x-2y=4…②
これを解くために、加減法、代入法という解き方を学習していきます。中1数学では一つの方程式を解くだけでよかったのが、二つになった時点で、計算量は単純に約2倍になるイメージです。
中1数学と中2数学の違い
- 方程式で、加減法、代入法という、新たな解法が出題される
- 方程式においても、文字(xやy)が1つだったのが、複数出てくるようになる
- 答えを出すまでの計算量が約2倍になる(≒計算ミスをすることが増加する)
一次関数の学習のポイント
中2数学は、どの単元も全て重要です。その中でも、特に重要となる単元が、一次関数です。理由は、高校入試で必ずと言っていいほど、出題されるからです。この単元のベースとなるものは、中1数学で言えば、「比例」「反比例」です。
(比例の式) y=ax
<比例の説明>
ともなって変わる変数x、yがあり、その関係がy=axで表されるとき、yはxに比例するという。
(反比例の式) y=ax
<反比例の説明>
ともなって変わる変数x、yがあり、その関係がy=axで表されるとき、yはxに反比例するという。
言うまでもありませんが、中1数学の「比例」「反比例」でつまずいている場合、中2数学で確実につまずきます。
数学は、積み重ねの科目です。一度分からなくなると、雪だるま方式で、分からない問題が増えるため注意しましょう。
実際の例
一次関数の式と説明は以下になります。
(一次関数の式) y=ax+b
<一次関数の説明>
ともなって変わる変数x、yがあり、その関係がy=axで表されるとき、yはxに比例するという。
aは傾き、または変化の割合。bは切片といいます。
変化の割合とは、xの増加量に対するyの増加量の割合です。
一次関数y=ax+bの変化の割合は一定で、aに等しくなります。
また、一次関数は問題の種類も豊富です。グラフや文章問題、三角形などの面積を絡めた問題など、多種多様です。
そのため、どのような角度から出題されても、それに対応する応用力が求められます。
またもう1点、注意しなければならないことがあります。
一次関数の問題を解くために、それまでに学習してきた計算をマスターしておく必要があるということです。
中2数学で連立方程式を学習するということは既に述べましたが、この一次関数でも連立方程式を使います。
これが意味することは、もし一次関数の解き方が分かったとしても、連立方程式ができなければ、当然解けないということです。これが、中2数学で一度つまずいてしまうと、その後もそつまずき続けてしまう要因です。
中1数学と中2数学の違い
- 関数において、変化の割合や切片という新たな概念がでてくる
- 一次関数では、文章題や図形などを絡めた問題など、出題形式が多種多様になる
- 一次関数を解くまでの計算は、それまでに学習してきた方程式などの解法を使う
図形の調べ方の学習のポイント
図形の範囲でまず学習するのは、角や平行線に関する内容です。対頂角や同位角、錯覚の位置や求め方。
次に多角形の内角や外角の求め方や公式です。
多角形の外角の和は、180度×(n-2)で求める
多角形の外角の和は、360度である
基本的には図形の性質を把握しながら、角度や辺の長さを求める計算問題が多いですが、ここでも途中の計算ミスをする中2生が続出するので、基本の計算力を身につけておく必要があります。
実際の問題の例
次に、合同と証明です。
もしここまでの単元で、中2数学に苦手意識を持っていたとしたら、この証明でトドメをさされるといっても過言ではありません。
先述した、「文字式の利用」でつまずいていた場合、この証明も大変難しい単元になります。
「証明」とは、すでに正しいと認められていることがらを根拠として、仮定から結論を導くことをいいます。
文字式の利用でもあったように、論理的な説明が求められます。
その際に使用するものが、三角形の合同条件です。
三角形の合同条件
3組の辺がそれぞれ等しい
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
合同条件は、ある2つの三角形があるとして、それらが合同であるかどうかを証明するために使用します。
その中で、例えば角度について等しいことを説明する際に、対頂角や同位角、錯覚を使用することもあります。
もはや言うまでもないかもしれませんが、対頂角や同位角、錯覚を求める問題が理解できていないと、この証明でも解けなくなってしまいます。
中1数学と中2数学の違い
- 角度を求めるために、対頂角や同位角、錯覚という新たな概念がでてくる
- 論理的説明を求められる、証明問題がでてくる
- 仮定や結論、合同条件など、言葉の意味の理解や思考力が求められる
図形の性質と証明の学習のポイント
この単元は、先ほどの角度や証明の続きになります。簡単に言えば、さまざなな図形での角度や辺の求め方、証明を学習していきます。
主に出てくる図形
二等辺三角形
正三角形
直角三角形
平行四辺形
上記の図形について、角度や辺の長さを求める問題、証明問題が出題されます。ここでも中学2年生を悩ませるのが、特に証明になります。
というのも、新たな合同条件や、各図形の定義や性質の理解と暗記が必要になります。
直角三角形の合同条件
二等辺三角形
直角三角形の、斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい
直角三角形の、斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい
二等辺三角形の定義
2つの辺が等しい三角形
二等辺三角形の性質
二等辺三角形の底角は等しい
二等辺三角形の頂角の二等分線は、底角を垂直に2等分する
正三角形の定義
3つの辺が等しい三角形
正三角形の性質
内角が全て60度
平行四辺形の定義
2組の対辺がそれぞれ平行な四角形
平行四辺形の定義
2組の対辺はそれぞれ等しい
2組の対角はそれぞれ等しい
対角線はそれぞれの中点で交わる
このように、それぞれの定義や性質を暗記するとともに、その意味を理解していく必要があります。
そしてそれを駆使しながら、証明問題を解いていかなければなりません。
場合の数と確率の学習のポイント
確率の単元は、中2数学の中でも、比較的解きやすい単元かもしれません。とはいえ、ここでも論理的思考力が求められますので、簡単というわけではありません。また、確率の組み合わせパターンを導き出すための樹形図や表を書くことも求められます。
実際の問題の例
まずは、よくでるサイコロの確率について見ていきましょう。
(例)サイコロの1の目が出る確率を求めたいときは次のように考えます。
平行四辺形の定義
2組の対辺はそれぞれ等しい
2組の対角はそれぞれ等しい
対角線はそれぞれの中点で交わる
- 目の出かたは、1、2、3、4、5、6の6通り
- どの目が出ることも同じ程度である
- 1の目が出る場合は1通り
つまり、1の目が出る確率は1/6となります。
確率の求め方
起こる場合が全部でn通りあり、そのどれが起こることも同様に確からしいとする
そのうち、ことがらAの起こる場合がa通りであるとき、
ことがらAの起こる確率 p=a/n
また、どの場合が起こることも同じ程度であると考えられるとき、同様に確からしいといいます。
サイコロでは、1から6のどの目が出ることも同様に確からしいので、確率は場合の数の割合で求めることができます。
次に玉を取り出すときの確率を見てみましょう。
確率の求め方
(例)赤玉3個、青玉2個、黒玉1個がはいっている箱から玉を1個取り出すとき、赤玉が出る確率は、①玉は6個なので、玉の取り出し方は全部で6通り
どの玉の取り出し方も、同様に確からしい
③赤玉が出る場合は、3通り
だから、赤玉が出る確率は3/6=1/2(約分ができるときは約分もしましょう。)
この箱から色のついた玉を取り出すとき、色のついた玉はが出る場合は6通りなので、色のついた玉の出る確率は、6/6=1となります。また、白玉が出る場合は0通りだから、白玉の出る確率は、0/6=0といえます。
これまでのことから、確率では次のことがいえます。
かならず起こることがらの
確率は1であるけっして起こらないことがらの
確立は0である
(例題)
2つのサイコロを投げるときの確率
2つのサイコロを投げる問題では以下のような表を書いて確率を求めましょう。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
1 | ||||||
2 | ||||||
3 | ||||||
4 | ||||||
5 | ||||||
6 |
ではこの表を用いて出る目の数の和が9になる確率を求めてみましょう。
例えばサイコロの目が2つとも1が出たとすると、出た目の数の和なので、1+1=2となります。なので表にはこのように書きます。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
1 | 2 | |||||
2 | ||||||
3 | ||||||
4 | ||||||
5 | ||||||
6 |
こうして百マス計算のように表を埋めるとこうなります。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
2つのサイコロを区別すると、目の出かたは全部で36通り。出た目の数の和が9になる場合は赤マルをつけた4通り。だから、出た目の数の和が9になる確率は4/36=1/9となります。
2つのサイコロを投げる問題では、出た目の数の和ならば足し算、差なら引き算、積なら掛け算、商なら割り算をして表を埋めて確率を求めていきましょう。
中1数学と中2数学の違い
- 確率という概念自体が、中2数学で初めて学習する
- 図や表を自分で書きながら、答えを導き出すことが求められる
- 答えを出すまでの計算量が約2倍になる(≒計算ミスをすることが増加する)
箱ひげ図とデータの活用の学習のポイント
この単元は、2021年から実施された学習指導要領において、新たに中学校で追加されました。元々は、高校数学(数I)で扱われていた「データの分析」「四分位数」「箱ひげ図」などの内容が、中2数学に移ったものとなります。
四分位数とは何か?
あるデータの散らばりを、大きく5つの数で表す方法。その5つの数とは、データを大きさの順番で並べた時の両端の数(最大値と最小値)と、4分割する3つの数(四分位数)のことをいう。また、四分位数は、値の小さい方から、第1四分位数、第2四分位数、第3四分位数という。第2四分位数は、中央値でもある。
箱ひげ図とは何か?
最小値、第1四分位数、第2四分位数、第3四分位数、最大値を、箱と線を使って1つの図に表したものを、箱ひげ図という。
言葉の意味の理解と、資料の読み取りができれば、それほど難関単元という訳ではありませんが、計算、関数、図形や証明などの単元とは、一味違った思考力を求められますので、ひとつひとつしっかりと定着させていきましょう。
中1数学と中2数学の違い
- 箱ひげ図という、なじみの薄い資料の読み取りを求められる
- 元々は高校で学習していた単元のため、言葉が難しく、その意味の理解が必要になる
まとめ
中2数学でつまずくと取り返しが難しい!ということを最初に述べました。まずひとつには、中2数学でつまずく=中1数学でもつまずいている=中1数学の復習が必要、ということです。つまり、中1数学の復習をしながら、どんどん新しくでてくる中2数学も併行して学習していかなければなりません。中2数学で勉強が追いつかず、テストの成績もなかなか伸びない状況に陥りやすいのです。そうならないためにも、できる限り早い時期から数学を復習するように心がけましょう。